いずい・いづい(宮城の方言・仙台弁)の意味や使い方

30秒でわかる「いずい」

「いずい」は、体や物の位置、着心地などに違和感があり、しっくりこない状態を表す仙台弁です。「痛い」「かゆい」と言い切るほどではないものの、そのままにしておくと落ち着かない。そんな微妙な感覚を短く表せます。

いちばん近い標準語違和感がある、しっくりこない
よく使う場面目、服、靴、コンタクトレンズ、物の位置、居心地
使われる地域宮城県を含む東北地方、北海道など
表記いずい、いづい。古い形や地域差として「えずい」もあります

「いずい」は、いずいとしか言えねぇどきがあんだっちゃ〜。

仙台弁こけし
いずいと感じている仙台弁こけし

「いずい」の意味とニュアンス

「いずい」が表すのは、何かが本来あるべき位置や状態から少しずれているために生じる不快感です。原因をはっきり説明できないときにも使えます。

たとえば、服の袖が中でねじれている、靴の中に小石が入っている、コンタクトレンズが少しずれている。このような「直せば楽になりそうなのに、今は妙に落ち着かない」という感覚が「いずい」です。

強い痛みがあるなら「痛い」、皮膚をかきたくなるなら「かゆい」と言えます。「いずい」は、そのどちらにもぴったり当てはまらない違和感を受け持つ言葉です。

場面別の使い方と例文

場面仙台弁の例文標準語で言うと
服袖んどごたごまってで、いずい袖が中でまくれ上がって、着心地が悪い
靴靴さ石っころ入って、いずい靴に小石が入って、しっくりこない
目コンタクトずれで、目ぇいずいコンタクトレンズがずれて、目に違和感がある
衣類マスクのひもねじれで、いずいマスクのひもがねじれて、落ち着かない
物の位置このふた、ちゃんとはまってねくていずいふたがきちんとはまらず、しっくりこない
居心地なんだがこの席、いずいなやなんとなくこの席は居心地が悪いなあ
気持ちその話、なんだがいずいその話には、なんとなく引っかかるところがある

「いずかった」のように過去形でも使えます。ただし、言い方や活用には地域差と個人差があります。

標準語にすると何?

「いずい」と完全に同じ意味の標準語はありません。何がいずいのかによって、次のように訳し分けます。

  • 目や体の感覚:違和感がある、むずむずする
  • 服や靴:着心地が悪い、窮屈だ、当たって気になる
  • 物の位置:しっくりこない、うまく収まらない
  • 場所や人間関係:居心地が悪い、落ち着かない
  • 考えや話:何か引っかかる、腑に落ちない

英語でも一語には決まりません。体の不快感なら uncomfortable、何かがしっくりこないなら doesn’t feel right や feels off が近い表現です。

「いずい」は仙台弁?北海道弁?

「いずい」は仙台と宮城で現在も使われている方言です。一方、東北のほかの地域や北海道でも使われています。そのため、「仙台弁と北海道弁のどちらか一方だけ」と考えるより、地域ごとに使い方やニュアンスを変えながら残ってきた言葉と捉えるほうが正確です。

国立国語研究所が公開している講演記録では、1996年に宮城学院女子大学で行われた「知っている方言」の調査で、「い(え)ずい」が最多の回答でした。共通語化が進む中でも、人の感覚や気持ちに関わる方言は残りやすく、「いずい」はその代表例と説明されています。

「いずい」「いづい」「えずい」の違い

現在は「いずい」と書くことが多く、「いづい」という表記も見られます。研究資料では「い(え)ずい」や「エズイ」とも記され、発音と表記には地域差があります。どれか一つだけが正しく、ほかが誤りというわけではありません。

「いずい」の語源

「いずい」の古い形とされる「えずい」は、中世の京都周辺で「不快に感じるほど対象を恐れる」意味で使われていました。その言葉が各地へ伝わり、東日本では「不快感」「行動のしにくさ」「身体的な違和感」へと意味を変え、東北では心理的な違和感にも使われるようになったと研究されています。

小林隆先生による解説

今もよく耳にする「めんこい」は奈良時代、万葉集に登場する形容詞の「めぐし」が起源だ。奈良の都の言葉が遠路はるばる旅をして、東北の地で定着した。

元々は「胸が締め付けられるほどいとしい」という心情を表す言葉だったが、いつしか見た目のかわいらしさを示す言葉になったという。

「むずむずする」「ちくちくする」という意味の方言「いずい」も、似たような変化をしてきた言葉だ。

室町時代に京都で話されていた「えずい」から来ているこの言葉は、「身の毛がよだつ」や「怖ろしい」の意味だったが、東北に伝わり、体の違和感を指す言葉になった。

産経ニュース「【新人記者奮闘す】『めんこい』『いずい』…宮城の方言の意外なルーツ」より。東北大学大学院文学研究科国語学研究室・方言研究センター 小林隆教授の解説

東北大学が公開している研究紹介では、「いずい」は、目にごみが入ったときのような、身体の表面で感じる何とも言えない違和感を表す仙台弁として説明されています。標準語では置き換えにくい感覚を表せることが、現在まで使われ続けてきた理由の一つです。

よくある質問

「いずい」は悪口ですか?

悪口ではありません。体の感覚、物の収まり、居心地などがしっくりこないことを表す形容詞です。

「いずい」と「かゆい」は同じですか?

同じではありません。かゆみが原因で「いずい」と感じる場合はありますが、「いずい」は痛いともかゆいとも言い切れない違和感にも使います。

気持ちや雰囲気にも使えますか?

使うことがあります。東北では、身体的な違和感から心理的な違和感へ意味が広がったことが研究で指摘されています。ただし、地域や話し手によって使い方は異なります。

4コマ漫画について

「いずい」の4コマ漫画は、サイトでの公開を終了しました。仙台弁こけしの4コマをもっと読みたい方には、春夏秋冬の漫画104本とご当地あるあるコラムを収録した公式書籍があります。

※サイトで公開していたすべての4コマ漫画が、書籍に収録されているわけではありません。

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参考資料

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